セリフの裏を考えて、深みを持たせるメソッド。
昨日のブログ の内容を掘り下げた、アドラーのメソッド演技です。
【そのセリフを言う時、あなたの本心は?】
セリフの裏に隠されたものを考えましょう。
「なぜ」の部分は俳優が自分で考えるもの。脚本に書かれているのはアウトラインだけ。俳優はそれを劇にしなくてはなりません。
私が誰かに「焦るのはやめなきゃ」と言うとする。本心のメッセージは「あなたはイライラしすぎよ」
病院の廊下でシーンを演じると想像して下さい。
脚本では医師がナースに「彼に薬をあげたかい?」。ナースのセリフは「いいえ」。ナース役の俳優が心の中で「あの患者さんは呼吸停止してしまいました」というメッセージを作ったら、演技はどうなるでしょう?「いいえ」というセリフだけを読むと機械的ですが、それよりずっと重みが生まれるでしょう。
「あの患者さんは呼吸停止してしまいました」を、もっとあからさまなメッセージにしてみましょう。⇒「彼は今朝、死にました・・・」
医師:「彼に薬をあげたかい?」
ナース:「彼は今朝、死にました・・・」
ご参考までにどうぞ。
あるいは、レストランで男性が女性に砂糖を勧めるシーン。
女性のセリフは「いいえ、結構です」。心の中の理由が、「私、糖尿病だから」であれば、女性のセリフに強さが生まれます。
授業中、私がアシスタントのパールさんに「黒い服はやめてよ」と言ったとします。今日は彼女も私も、黒いドレスを着ています。言葉の裏に隠された私の心の中のモノローグは「教職員が全員黒い服を着ていたら、生徒の気持ちが暗くなるでしょう」です。
私はパールさんに、言葉の裏に隠れた理由を説明はしません。
する、しないに関わらず、言葉の裏には必ず本心の理由が存在する。私の言葉を聞いた観客も、裏に隠れた理由を理解する。
私が女子生徒に「プリーツスカートを履くのはやめなさい」と言うとします。その言葉に隠れた意味は「女優を目指すなら、時々は違う服装をしなさい」ということ。
あるいは「髪を三つ編みにするほうがいいですよ」と言うとします。心の中での理由は「あなたが髪を三つ編みにすれば、昔のある時代の雰囲気が出ます。この役を演じるには物静かな感じが必要なので、合うと思いますよ」ということ。
「ジェニファー、メモをとるのはやめなさい」と言えば、隠れた意味は「メモを書くことにばかり気をとられて、授業をきちんと聞いていない。それは女学生のやることです。そんな習慣は捨てなさい」
俳優がどう心の中の理由づけをするかは自由です。
脚本の中で指定されることはありません。そして、心の中の理由はあらゆる場面において、人物の心の中で存在します。人間は、心で思ったことをそのまま口に出しませんからね。
生徒に対して私は「元気?毎日休まずクラスに来て、えらいわね」と言うかもしれない。でも心では「彼は真面目ね。いつも手を上げるし。おもしろみのない子だわ」と思っているかもしれません。
こうしたジャスティフィケーションを、常に行ってください。
パートナーとの関係、シーンの状況、小道具との関係、すべてに理由が必要。理由のモーターは止まらず動き続ける。そのモーターが止まったら、あなたの演技は死にます。死んだ空気は観客にも伝わります。
ある俳優に「いつかあなたと話がしたいわ」と言ったとします。それだけしか私は言わなかったとしても、私の心のモノローグはこのように続きます。「孤独を好む癖がついているようですね。孤立して、氷に閉じ込められているみたい。どうぞ心を開いて下さい」
隠れた理由づけは、どれだけ深くしてもいいです。
最後に、数行のセリフを差し上げます。ペアになって演じて下さい。セリフ自体には、あまり意味がありません。隠れた理由を探し出しなさい。筋道をつけて、説得力があるものにして下さい。
「私だったら入らないよ」
「彼女、どのくらいの間、ああしているんだろう?」
「彼女のドレスには、まだシミがある」
「彼、まだ出て行ってないの?」
「一時間前にドアがばたんと鳴ったよ」
「あの青い車、彼のだと思うんだがなあ」
「魂の演技レッスン22 輝く俳優になりなさい!」より抜粋させていただきました。
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