シェイクスピアとチェーホフ
きのうのブログ「演劇に革命が起こった」の詳しい説明です。
3日連続チェーホフ論♪
シェイクスピアとチェーホフ相違点
シェイクスピアを演じるなら、すべてがセリフの中に表現されています。
優れた俳優はセリフに隠された意味を読み取りますが、シェイクスピアでは言葉そのものを読めばすべてがわかります。
『ロミオとジュリエット』の第一幕。通りで争いが起こります。
ジュリエットの年老いた父はこう言います。「あの音は何だ?長い剣をとってくれ!」彼の妻はこう言います。「あなたには杖ですよ、杖!なぜ剣がほしいとおっしゃるのです?」。
二人のセリフを読めば、どう動いているのか自然にわかります。
イプセン以降の作品群には、これが当てはまりません。
だからスタニスラフスキイ氏は、新しい演技テクニックを作る必要に迫られたのです。
チェーホフの作品をごらんなさい。セリフだけを読んでも理解できない。イプセンもそう。ストリンベリ、テネシー・ウィリアムズ・・・オデッツも。脚本の字面を追うだけでは、演じられない。人物の作り方が、以前とはまったく違うのです。
脚本にプリントされた言葉を見たって演技はできませんよ。演技はあなたの内側から生まれるのです。言葉に対するあなたの解釈が必要。クリアーで、シャープな解釈が必要。
まず言葉を読むとしても、その裏側まで考えていかないと。
参考文献
魂の演技レッスン22 輝く俳優になりなさい!【フィルムアート社】
ステラ・アドラーが語る「スタニスラフスキイ氏は、新しい演技テクニックを作る必要に迫られた」と思われる話が、新潮文庫「桜の園・三人姉妹」の解説にありますよ。
三人姉妹は、スタニスラフスキイが演出した
作者と演出家とのあいだに起った小さな争いの逸話がある。
「三人姉妹」初演の演出家は、有名なスタニスラフスキイであるが、彼は終幕の幕外で男爵トゥーゼンバフがソリョーヌイとの決闘で落命したあと、わざわざ男爵の死体を戸板に乗せて、舞台を横切るように演出した。屍骸(しがい)はつねに強烈な印象を観客に伝えるはずである。
ところが、チェーホフはそれを聞いて憤慨した。戯曲にはそんなことは書いてないというのである。
一発の銃声、それでその場は表現できると信じたのだ。