ヴェニスの商人
女生徒の視点
ワークショップに通ってくれている女生徒の意見を紹介します。
私は今まで文学作品に触れる機会がなかったので良い機会だと思い「ヴェニスの商人」について調べてみました。
その結果、3つの視点が分かりました。
1.反ユダヤ主義について
新約聖書でユダヤ人は救世主イエスを十字架にかけた罪深い人々と言われ、土地を所有できないなど長年差別されてきました。
このことからシャイロックのようにキリスト教徒を憎む人が出てくるのもおかしくないように思いました。
2.当時のイギリスの情勢
1594年エリザベス女王の侍医、ユダヤ系ポルトガル人のロデリーゴ・ロペスがエリザベス女王毒殺を図ったとして処刑されました。
ヴェニスの商人はこの事件の2〜3年後に書かれたもので当時のロンドン市民の激しい怒りを表しているようにも思います。
3.シェイクスピアの幼少期
シェイクスピアは幼い頃から貴族や王族のカリスマ性に強い憧れを持っていたそうです。
このことから、エリザベス女王毒殺未遂はシェイクスピアにとっても、とてもショックな事件だったのではないかと思います。
「ヴェニスの商人」は、シェイクスピアの心情を反映しているようにも思いました。
わたしなど足元にもおよばない鋭い分析です。感服しました。
生徒の女の子も指摘しているように、当時のユダヤ人は、みんなから嫌(きら)われる「金貸し」のような仕事しかやらせてもらえませんでした。職業を自由に選ぶことができなかったのです。
それだけではありません。「ヴェニスの商人」*1劇中のセリフにもありますが、アントーニオ*2はただで人に金を貸し、数少ない彼らの仕事の邪魔をしたばかりか、「シャイロックは高利貸しだ」と悪態をついていたのです。
ドイツの詩人ハインリッヒ・ハイネは、1827年来英した折に観劇した「ヴェニスの商人」について、次のように書いています。
「私がこの作品をドルリー・レインで見たとき、私のうしろの桟敷席(さじきせき)に青白い顔のイギリス美人が立っていたが、第四幕の終わりになると、激しく泣きじゃくり、何度も何度も、可哀そうにあの人はひどい目にあわされた!と叫んでいた。
彼女はギリシア人のように彫りの深い高貴な顔立ちをし、目は大きな黒い瞳であった。
私は今でもそれを、シャイロックのために泣いたあの大きな黒い瞳を忘れることができない。」
ハイネは、彼自身ユダヤ人であった。したがって、彼の同情はシャイロックの方に傾き、アントーニオをはじめとしたヴェニス人を痛罵している。
参考文献
「ヴェニスの商人」は【制作された時代背景】や【民族的な歴史や感情】など、視点を変えることでさまざまなものが見えてくる作品ですね。
というわけで本日は朗読と「ヴェニスの商人」のレッスンを行いました。
また、休み時間には「わけあって絶滅しました。 [正] 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑 ダイヤモンド社」の話題で盛り上がりました。
めっちゃ面白い本です。大人気なのもうなずけます。「ヴェニスの商人」「わけあって絶滅しました。」どっちもおすすめ。