あらしのよるに.5
五巻目「どしゃぶりのひに」
おおかみのガブとやぎのメイの友情を描いた絵本「あらしのよるに」シリーズ第五作目「どしゃぶりのひに」のテーマを、原作者の木村祐一さんが語っています。
岐路での選択
「生まれた時から一緒にいた自分たちと、最近出会ったばかりの友達とどちらを信じるんだ」というのがある。
人間というのは常に変化しているものだから、最近すごく意気投合したけれども、今までの自分のまわりの価値観からは合わない人間っている訳だ。
恋愛だったら、「あんな男と付き合うな」と親に言われても、そこに恋が成立していれば反発するだろう。すると「生まれた時から育てた親とどっちを信じるんだ」となって選択を迫られる。
人間が変わっていく時には、そういう二股に立たされている場合が多いものだ。
新しい価値観に出会い、自分がその価値観を受け入れたいとしたら、それまでの価値観をはぐくんだ社会と対立が生じることは避けられない。
四巻目で二人は「人には言えない友達」になる訳だが、五巻目でばれる。そこできびしい選択をしなければならなくなる。
ガブとメイは、それぞれの集団の中で「お前は仲間だ。私らの言うことを聞け。あいつを裏切れば、俺たちの仲間として、これからも迎え入れてやる」と、仲間を裏切って親友を選ぶのか、それとも親友を裏切って仲間として「安定」を得るのか、という選択を迫られる。
その辺が、結果的に企業で生きるサラリーマンに通じるテーマになっていたのかもしれない。
参考文献
きむら式 童話のつくり方 講談社現代新書