深層心理と演技
村上春樹さんについて書かれた、毎日新聞の記事が読み応えがありました。紹介させていただきます。
「視点・村上さんの言葉」
最も印象的だったのは「物語」をめぐる言葉だった。人間を2階建ての家にたとえるのが村上さんの持論だ。1階には家族が住んでいて日常生活をしている。2階では個人に戻って読書をしたり、音楽を聴いたり、眠ったりする。地下1階には記憶の残骸が置かれている。
地下1階からは浅い物語しか生まれない。そのさらに下に闇(やみ)の深い部屋があって、そこにこそ本当の人間のドラマがあるというのだ。魂に響く物語を紡ぐには、この闇(やみ)に入り、正気で出てこないといけない。
地下1階で小説を書くと批評しやすい作品ができる。そういう作家はいっぱいいる。でもその下に行かないと人の心をつかむ物語は生まれない。両者は人の心の温め方が、ただのお湯と温泉ぐらい違う。
人間は誰でも自分が主人公の物語を持っている。大人になるに従って、それは複雑化していく。読者は小説に書かれた物語を自分の物語と比較すれば、自分の生き方を問い直すこともできるだろう。作家と読者の物語が共鳴すると魂がつながる。
今の社会には多くの「物語」があふれている。テレビ、ゲームソフト、テーマパーク、人生論や文明論。それが浅かったり、妄想であったりしては、人を幸せにしないだろう。物語の質を見きわめる能力が、現代をよりよく生きるには必要なのではないだろうか。
「物語」を「演技」に置き換えて読んでみると・・・深いお言葉ですね。肝に銘じていきたいと思います。
引用
毎日新聞