変態小説
これはやばい、さすがにやばい、いくらなんでもシャレにならん。これを読んでしまうと、以前のブログで〝変態小説〟だと論じた「指環」が可愛く思えてしまいますぅ。
士族 川端康成
「絵が好きならうちへいらっしゃい。絵の本をいくらでも見せてあげるよ。」
「今直ぐ行ってもいいの?」
彼がうなずくと、少女は頬にきつい色を見せてつかつかついて来た。
彼は叩(たた)くように少女の肩に掌を落して、士族を握りつぶしでもするかのように指先へ力を入れた。
「あんたの肖像を描いてあげようね。」
「あら、嬉(うれ)しいわ、ほんと?」
「ほんとだとも、今日はその白い服を着たまま描いて上げるけれどね、あんただっていろんな展覧会で見て知ってるでしょう。
人体は裸でなくちゃいい絵は描けないんだよ。
あんただって裸でないと、あんたのほんとの美しさが描けないんだよ。この次には裸になってくれる?」
少女は花嫁のようにこわい顔になってうなずいた。
彼は針を刺されたように驚いた。
しかし、これもまた余りに士族の心臓であったらしい。なぜなら、アトリエで少女と二人きりになると彼は彼の内の士族の道徳を感じ出して来たから——。
新聞紙を食べる赤子のように、彼は士族の娘を花茎のような足からむしゃむしゃ齧(かじ)ってしまうはずであったにもかかわらず——。
ラストの「にもかかわらず——。」から考えられることは、「むしゃむしゃ齧(かじ)ってしまうはずであった」のに、彼は士族の道徳を感じ出して、悪いことはできませんでした。という解釈になるんだと思われます。
——しかし、そうだとしても
ずぅぇぇっったいアウトですぅぅ・・・。
今回紹介した「士族」「指環」は新潮文庫「掌の小説」に載っています。どちらも、3~5ページの短篇ですのであっという間に読めますよ。それでは、また。
引用
掌の小説 新潮文庫