かれはなにも知らないということを知っていて、他の人びとから学ぶ用意と努力とを怠らなかった。
かれが目指したのは、刺激することであり、他人と対決することであり、他人が考えるのを助けることであった。
このソクラテス的な特性は、かれの作品全体に浸透している。
かれの原則の一つは、「もう一度逆から試してみよう」であった。
また何週間も稽古したあとでえられたものに満足できず、ちがった視点からやり直すことを、自分と俳優とに要求するという場合もあった。
何度も、ちょうどこういうやり方で成果をおさめたのだった。
引用
ブレヒトの思い出 法政大学出版局