ワークショップ 声優演技研究所 diary

「なんで演技のレッスンをしてるんですか?」 見学者からの質問です。 かわいい声を練習するのが声優のワークショップと思っていたのかな。実技も知識もどっちも大切!いろんなことを知って演技に役立てましょう。話のネタ・雑学にも。💛

【音声】ブレヒト作「ロミオとジュリエット」



俳優練習用台本、ブレヒト作「ロミオとジュリエット」より、ロミオと小作人のセリフひとり芝居です。

いろんな演技の解釈があると思いますが、ポイントは「ロミオを悪者にはしない」だと思います。なぜなら、このセリフを悪者みたいに表現するほうが、ずっと簡単だからです。

『セリフ全文』

ロミオ
さっきもいったじゃないか、爺や、金がいるんだって、別に悪いことに使うわけではないんだ。

小作人
でも、わしらどこへ行ったらいいだよ、若様に急に地所売るなんていい出されたっても。うちは五人家族だもんな。

ロミオ
どこかほかで雇ってもらえないのかね。お前はとても働き者だし、僕からとびきりの推薦状を書いてあげてもいい。僕には金がいるんだ。いろいろ義務もあるしね。こんなこといってもお前にはわからんだろうが、ちょっと説明をすると、おれにすべてをささげたレディーと、贈り物ひとつしないでどうして別れられるんだ。「さようなら、あなたに、贈れるのはこの愛情だけ、ほかにはなにもありません」なんて。そんな卑劣なことをおれにさせようと思ってるんだったら、お前はやくざな悪党だぞ。がりがり亡者だぞ。それに別れの贈り物ってものは金がかかるんだ。それになんの下心もなしに贈らねばならないものだからね。それくらいはお前だってわかるだろう。お返しをもらおうなんてものじゃない。そうだろう。いじわる爺さんみたいなことをするのはやめてくれよ。お前じゃないか、おれをひざに抱いてゆすぶってくれたり、はじめて弓をつくってくれたりしたのは。そのお前が、「ゴッボーさえ俺を理解してくれないのだ、おれをつめたく見捨てたんだ、おれをやくざあつかいにするんだ」なんておれにいわせる気かい。おい、おれは恋をしてるんだぜ。そのためにならなんでも犠牲にするつもりなんだ。おれの愛しているあの女のためなら、どんな悪いことだってやるつもりなんだ。人殺しだってかまうもんか。むしろ誇りに思ってるくらいだ。お前にはわからんだろうがね。お前は年をとりすぎたんだ、ゴッボー爺や、ひからびちまったんだ。わかるかい、そのために、もうひとりの女と別れなければならないんだよ。それでお前を信用して聞いているんじゃないか、お前はまだ、昔通りのゴッボー爺やかって?返事をしろよ。

小作人
若旦那さま、おら口下手だけんどもな。どうしてもわからねえだよ、あんた様の御領地からおんだされちまったら、家族をつれてどこへ行ったらいいだか。

ロミオ
なさけないじいさんだなあ。もうなんにもわからないんだ。おれはもう絶体絶命なんだっていっても、領地のことばかりぶつぶついってやがる。あの領地はおれのものだろう?わからなくなってきたよ。いや、おれは領地なんてもってやしない、それとも、もってるのかな、そんなら売らなくちゃならない。領地なんて、もうどうだっていい。おれはもう絶体絶命なんだ。

小作人
でも、わしら飢えちまうだよ、若旦那さま。

ロミオ
ばか、お前とはまともに口もきけない。お前たちけだものには感情ってものがないのか!出て行け、いますぐ目の前から。

小作人
へい、出ていくだよ、そんじゃ、おらの着物も欲しいだな。(着物をぬぐ)かぶり物も、はき物も?おらたちゃけだものだべ?そんでもやっぱし餌はいるだよ。

ロミオ
そうか、おれにたてをつく気だな。とうとう本性をあらわしやがって。斑点をかくすみたいに、二十五年もかくしていた本性をな。人間なみにあつかってやった報いがこれだ。さあ、出てうせろ!さもないと容赦しないぞ、このけだもの!

(かれは小作人を追い立てる。だが恋愛場面の間も、小作人はまだ、その辺をうろうろしている)

ロミオ
他人の傷を笑うもんだ、自分で傷を受けたことのない奴にかぎって。



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ヤマトその2

7月21日の「宇宙戦艦ヤマトと70年代」の続き。

今回は、ガミラスイスカンダルについて。

ガミラスのネーミング

ヒス、ドメル、ゲールといったネーミングと制服のデザインから、ガミラスナチスドイツが発想のもとになったと容易に想像がつく。


だが、実情はもう少し複雑だ。


当初、ヤマトの敵はラジェンドラという名前だったが、松本零士の発案でガミラスに変更された。このガミラスはレ・ファニュ原作の「吸血鬼カーミラ」から取られた。この小説は「血とバラ」というタイトルで1960年に映画化された。


最初ガミラスの総統の名はバンパレラと吸血鬼そのものの名前だったが、デスラーへと落ち着いた。初期デッサンは独裁者というより、松本が挿絵を描いたC.L.ムーアのゴシックホラー的SF小説に出てくる魔人のようなイメージだ。


デスラーの名前は、命名者の松本によると、ヒットラーではなく、デス(死)+ラー(太陽)から来ているという。
頁160


西遊記


SF考証担当の豊田有恒は、「ヤマト」の核となるプロットに隠された秘密をこう語る。


「折から、公害、環境問題が、身近なものとして取り上げられるようになっていた。そこで、究極の環境汚染という設定を考えた。異星人の侵略によって核攻撃にさらされ、地球が放射能に汚染されて、滅亡が迫っているという設定である。


それだけでは、あまりにも救いがないから、ある星まで放射能除去装置を取りにいく道中という舞台を設定した。じつは、この設定には、モデルにした物語がある。


…世の中は乱れに乱れている。このままでは、世の終わりも近い。だが、天竺へ行って、ありがたいお経をとってくればみんなが救われる。…そう、西遊記がモデルなのだ」


目指す目的地イスカンダルは、古代インド語でアレクサンダー大王のことをさす。つまり、インド的なるもの。言ってみれば、天竺への救済の旅に、ヤマトは旅立つのだ。


西遊記」から「ヤマト」に受け継がれたもの。それは終末的状況を救う手立てを求めて旅立つこと。


「ヤマト」には、三蔵法師孫悟空猪八戒沙悟浄ら有名なキャラクターに該当する人物はない。


しかし「西遊記」にはもうひとり、三蔵法師一行を天竺まで導くため、陰日向なく見守り続ける重要なキャラクターがいる。観世音菩薩である。この役回りは、実はイスカンダル星のスターシャと重なる。


「ヤマト」の企画段階では、第三次・ヤマト企画書においてもスターシャは登場しない。松本零士の参加によって生まれたキャラクターである。地球の危機を救える存在は、地球の人智をも超える存在でなければいけない。この物語の要請から、スターシャが誕生したのではないだろうか。
頁169−171




小説「吸血鬼カーミラ」は小学生で「血とバラ」は中学の時に観ています。



美しい女性の吸血鬼が登場する幻想的な作品で大好きなんですが、ガミラスと関係があるとは知りませんでした。



だけど考えてみると松本零士さんが好きそうな作品であることはなんとなく想像できます。



また、西遊記がヤマトの元ネタというのは、他にもいくつかの本で指摘されていますので、ある程度は知っていましたが、ここまで詳しくは知りませんでした。


知らなかったことがわかるようになるのって楽しいね。


【おまけ】



ガミラスの思想と人類の関連性


科学者J.B.S.ホールデンは1928年に発表した「最後の審判」で、四千年後の未来に至る壮大な宇宙絵巻を発表している。そこでは三千年まで寿命の延びた人類が自らの過ちで地球を破壊させ、新しい天地を金星に求める。


自ら生体改造した新人類とそれにふさわしい生態系を作りだす生物とともに金星に大量移動。そこに棲む先住生命は抹殺される。



ホールデンに影響された哲学者、オラフ・スティープルドンもまた、1930年に「最後にして最初の人類」で同じように金星の先住知性体を移住に際し抹殺する未来図を作り上げている。



テラフォーミングという惑星環境の改造技術が「現実的な手段」として検討され始めている。アメリカの宇宙開発を民間から推進する圧力団体NSS(合衆国宇宙協会、旧名/L5協会)は、宇宙開発において生命倫理は不要であると断じている。



ここで、ガミラスデスラーの思想を思い起こしたい。彼はスターシャに地球侵略の非を責められ、自らの哲学を語った。

「滅ぼして当然だろう。野蛮人だ」
「科学の力は劣っていても、同じ人間です。生きる権利があります」
ガミラス人にも生き抜く権利はある」
「他人を滅ぼしてまでも?」
「そうだ」



このデスラーの思想は、ホールデンやNSSと非常に近しい。そう、彼は地球人のもうひとつの姿なのだ。


ガミラスの「生き残りたい」という願望は、コスモクリーナーDを求めてはるばるイスカンダルまで旅をしたヤマト、そして地球人の思いと共通するものがある。決してガミラスは悪だけの存在ではない。


イスカンダルの思想



「すべてのものには運命があり、定められた寿命というものがあります。

このイスカンダル星とあのガミラス星は二重惑星。双子の星として誕生したのですが、星としての寿命が終わりに近づいているのです。
そこでガミラス星の人たちは地球を第二のガミラス星として乗っ取ろうとして自滅したのでした。

私たちイスカンダル星のものはよその星に迷惑をかけたくはありません。運命を黙って受け入れるだけです」



他者を犠牲にして繁栄を得ようとするガミラスとは対照的な哲学である。


ガミラスの価値観がホールデンやスティープルドンの思想と共通するのなら、その反対のイスカンダルの価値観と共通する思想もまた存在する。


ナルニア国物語」で知られるC.S.ルイスである。彼は科学に対し、倫理の重要性を訴えた。その主張は別世界シリーズと呼ばれる三部作の小説「マラカンドラ」「ペレランドラ」「サルカンドラ」のなかで展開された。


ちなみに、ルイスの思想は科学主義からの反論を招いた。


先に紹介したホールデンはルイスの非科学性を批判したが、ルイスの方は科学のもつ管理主義的側面をナチズムを例にあげ反論した。これは両者の立場がそれだけ根源的に対立する故であるが、イスカンダルガミラスの違いとも通底する。


イスカンダルガミラスか。両者の間で揺れるヤマト…



続編「宇宙戦艦ヤマトⅢ」では太陽の核融合異常増進で、地球は再び壊滅の危機に瀕する。ヤマトは第二の地球探索に出るが、それは無為に終わる。


ふとした偶然で、ヤマトは地球そっくりの、だが無抵抗主義者が住む平和なシャルバート星にたどり着く。



土門竜介は、古代進にこう詰め寄る。

この星を占領しましょう。訳はないですよ。シャルバートを第二の地球に」

「恥ずかしいが、俺もいまそう考えていた。しかし、それでは俺たちもボラー連邦やガルマン・ガミラスと同じになってしまう



「ヤマト」は続編において、イスカンダルの道とガミラスの道を振り子のように揺れ、答えようのない問いかけを何度も繰り返すこととなる。
頁175−183

古代進の成長



「我々がしなければならなかったのは戦うことじゃない。愛し合うことだった」


このセリフに対し、反戦メッセージ、いや偽善的だとさまざまな意見が交わされてきた。しかし、この言葉の前段がむしろ重要である。


「俺たちは小さいときから人と争って、勝つことを教えられて育ってきた。学校に入るときも、社会に出てからも、人と競争し、勝つことを要求される。

しかし勝つものがいれば、負けるものもいるんだ。負けたものはどうなる。負けたものは幸せになる権利はないというのか。今日まで、俺はそれを考えたことはなかった。俺は悲しい。それが悔しい。

ガミラスの人々は地球に移住したがっていた。この星はいずれにせよ、おしまいだったんだ。

地球の人も、ガミラスの人も幸せに生きたいという気持ちに変わりはない。なのに、我々は戦ってしまった…」



古代進は「宇宙戦艦ヤマト・パート1」でのガミラス星までの旅程のなかで、閉ざした心から他者への共感を徐々に育んでいった。その到達点として、先のセリフがある。


うわべの反戦うんぬんではなく、自分に他者の視点が欠落していたという彼の痛切な悔いこそ注目すべきだろう。


そして、彼のセリフは「落ちこぼれ」という現象が生まれ始めた当時の時代を背景に考えると、その言わんとするところは明瞭となる。
頁224



宇宙戦艦ヤマト」は、古代くんが他者への眼差しを持ち、思いやりの心を育んでいくことが重要なテーマだったんですね。


正義と悪を単純に区別するのではなく、両方の立場を理解することで、奥の深い演技に結びつけていきましょう。

参考文献
宇宙戦艦ヤマトと70年代ニッポン 社会評論社



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宇宙戦艦ヤマトと70年代

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「時代に反逆する気分」。
脚本家・藤川桂介は「宇宙戦艦ヤマト」にこめた想いをこう語る。


彼はもともとアニメ以前に「ウルトラマン」「ウルトラセブン」などの特撮物を手がけていた。


ウルトラセブン」の第16話「闇に光る目」では、岩石宇宙人アンノンがかれらの母星に地球が送り込んだ観測ロケットを侵略行為と判断して攻め込んでくる。これは誤解なのだが、地球人の視点の相対化でもある。


結局アンノンは戦いを経て説得を受け入れて、母星に帰っていく。正義が立場によって逆転しうるというウルトラシリーズにあって、このエピソードもまた花を添えている。


「ヤマト」以前の藤川のアニメの最大のヒット作は「マジンガーZ」である。


藤川が担当した第七話「あしゅら男爵の大謀略」では、敵役あしゅら男爵の巧妙な煽動ではあるが、街が戦闘で荒廃した元凶は光子力研究所にあると市民が誤解。糾弾にあった兜甲児はみずからの依って立つ正義について悩む。


彼が同じく担当した第17話「地底機械獣ホルゾンV3」では、ドクターヘルは大地震を起こし、光子力研究所が屈服すれば助けてやると脅す。市民はそれに乗り、政府に要求を呑むよう迫る。


こうしたエピソードは市民の「愚かさ」を描いているとも言えるが、正義がこのころ既に自明で単純なものではなかったことも示している。


当時良識ある大人からは俗悪の代名詞のように言われた「テレビまんが」だったが、ここには新しい表現を作りだそうという想いが込められていた。



軍艦マーチ事件。作品をめぐる解釈のズレ


さまざまなスタッフの思い、発想、努力が結集した「宇宙戦艦ヤマト」だが、作品世界の解釈をめぐるズレもあった。


「ヤマト」に対してリアリズムを主張した桝田利雄は架空戦記、戦争映画という意識がやや強かったようだ。リアルにこだわれば、戦闘を過酷に描かざるを得ない。西崎義展もややそれに近かった。


西崎と桝田に比べ、松本零士はファンタジー、宇宙の大航海物語の要素のほうが強かった。


第二次世界大戦の回想シーンでは、彼は旭日旗は使わないよう指示した。そもそも「ヤマト」は戦艦大和のような科別に分かれた組織割りではなく、班別である。また軍隊の階級もなく、敬礼も軍隊式ではなく腕を胸のところに掲げる独特のもの。そのいずれも、「ヤマト」から軍隊色をなるべく排したいという松本の配慮の表れだった。


石黒昇も松本の「右にも左にも偏しない作り方」という姿勢に共鳴したという。この松本の意図は結果的に作品世界にプラスとなり、多くの人から支持される理由のひとつになったように思う。


一方、藤川桂介は彼の物語観から、リアリズムでもなくファンタジーでもなくその中間を狙うようにしたという。


第二話「号砲一発‼宇宙戦艦ヤマト始動‼」では、第二次世界大戦時、戦艦大和が米軍の攻撃で撃沈された光景が回想シーンとして登場する。西崎は、大和と僚艦が進撃する場面に軍艦マーチをあてようとした。


松本は頑強に反対した。


一歩も引かない西崎を見て、松本は番組を降りることすら考えたという。しかし制作会議で、演出助手の石崎すすむがこう発言したという。


「質問があります。二話では軍艦マーチが入っているそうですが、どういう意図で使っているのですか?我々は右翼的な作品を作るのに手を貸したくありません。お答えによってはこの場で辞めさせてもらいます」


けっきょく軍艦マーチは使われないことになった。


放送ぎりぎりのタイミングでその場面のみ納品済みのプリントではなく、ダビングし直したテープを差し換えることとなった。しかし新潟地方は間に合わず、軍艦マーチはそのまま放送されたという。そしてフィルム自体は軍艦マーチのまま修正しなかったので、再放送ではそのまま流れている。ちなみに、「宇宙戦艦ヤマト 劇場版」では軍艦マーチは流れない。



ガミラスは「宇宙戦艦ヤマト」の中で大きな役割を担っている。


一般に「ヤマト」はサブカルチャーにおいて、敵にも正義があることを描いた最初の物語とされることがあるが、それは正確ではない。ウルトラマン」のジャミラ、「ウルトラセブン」のノンマルト、「海のトリトン」のポセイドン一族などの前例がすでにあるからだ。


「ヤマト」が特筆すべきなのは、先の作品と違って敵が対等に扱われ、ドラマがあり、なおかつ魅力的であったことだ。


UFOに乗った異形の宇宙人、侵略者というのがこのころの敵のよくある姿だった。これに比べ、ガミラスは肌の色こそ違え、同じ人間であり、かれらはひとつの社会を持っていた。この社会を登場させた結果、「ヤマト」が同時代の作品を大きく突き放すクオリティを具えた。


ガミラス星全体主義国家である。

一般市民も設定はされていたが、作品中には登場しない。ナチス・ドイツをモチーフにしていることは明らかだ。そして敵が大王や帝王ではなく、総統という近代的な政治制度をベースにした世界観には洗練があった。


ちなみに、「パート1」では、単にガミラスと呼ばれ、設定としてはガミラス大帝星という表現があった。ガミラス帝国という呼称が登場するのは続編「宇宙戦艦ヤマト2」の第10話においてである。


大帝星という表現が第三帝国のような通称であるなら、当初はガミラス共和国というようなイメージであったかもしれない。あるいは星を国と同義で表したのだろうか。


たしかに「パート1」のガミラス帝国のような専制主義というよりは、独裁共和国の方がふさわしい雰囲気を持っていた。続編では、デスラーは武人としての側面が強調されるが、このときは現代的な政治制度を背景とした独裁者としての色彩が濃かった。


「ヤマト」はクリエイターがそれぞれの思想、価値観、感覚を持って制作に臨み、それが作品に反映された。特にメインのスタッフの誰ひとりが欠けても、いま我々が知る形の「ヤマト」は生まれなかったし、あるいは支持されなかった可能性が高い。たとえば西崎義展が、松本零士が、宮川泰がもしいなかったらとは想像もできない。その意味で結果としての作品は、誰かひとりに限定される表現ではなく、集合意識が生み出したもののように思う。




この解説本で一番インパクトがあったのは「帝国のような専制主義というよりは、独裁共和国」の部分です。



「え、独裁共和国って、どんな国???」と、いろいろ調べてみました。



共和国をかんたんに説明すると、君主(王様)がいない国家のことです。



君主国(王制)は多くの場合、世襲です。「エリザベス1世、2世」などがそうです。ちなみに現在のイギリスは立憲君主制(制限君主制)で、王様の力はあまり強くありません。



独裁共和国とは、君主(王様)じゃない人物が独裁を行っている国家です。



つまりガミラスとは、もともと王様ではない、ドイツのヒトラーのような人物が国のトップに立ち独裁政治を行った国家ということになります。



ぼんやりとは理解してましたが、はっきりとはわかっていませんでした。大変勉強になりました。



知識欲が刺激される、とってもいい本です。お勧めします。



またこの本には、「波動砲は『パート1』では、人間(ガミラス人)に対して撃つことは原則的になかった」との記述もあります。



本書が出版されたのは2010年11月です。
あくまで推測ですが、この指摘が「宇宙戦艦ヤマト2199」(2012年劇場公開、TVアニメは2013年4月より)の「ヤマトは波動砲を自身や誰かを守るために用いており、スターシャの意見を変えさせる」設定のヒントになった可能性もありますね。



「物語を深読みして新たな作品づくりにいかすのは演技も同じだよ」そのような話をしながら、本日もレッスンを行いました。また来週もよろしくね。

参考文献
宇宙戦艦ヤマトと70年代ニッポン 社会評論社


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【こぼれ話】

ちなみに私の所持しているCS放送を録画した「第二話」では、軍艦マーチは流れません。おそらく新たにプリントし直したのでしょう。いろんなバージョンがあるんでしょうね。

ウソつき!!!!

太宰作品『晩年』の中の一編、『ロマネスク』【注】

この作品の中に、「嘘の三郎」という男が出てきます。

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江戸深川の漢学者の息子として生まれた三郎は、子どものころから事あるごとにウソをつき、それが不思議と、そのまままかり通ります。

長じては、無心のためのウソの手紙を代筆してもうけたり、「人間万事嘘は誠」というウソだけで世を渡る男を描いた洒落本(しゃれぼん)を出版したり…。

「三郎の嘘はすでに神に通じ、おのれがこうといつわるときにはすべて真実の黄金に化していた」。

やがて、漢学者として一生を過ごしてきた父が死にます。

その遺書には、「わしは嘘つきだ。偽善者だ」と書かれていました。中国の学問など、信じてはいなかったというのです。

父を葬りながら、三郎は考えます。

嘘は酒とおなじようにだんだんと適量がふえて来る。次第次第に濃い嘘を吐(つ)いていって、切磋琢磨され・・・・


三郎はこれを機に、「嘘のない生活をしてやろう」と考えます。

そしてすぐに「その言葉からしてすでに嘘であった」と気づきます。その結果、「無意志無感動の痴呆の態度」で生きるしかなくなるのです。

ウソの技術を高め合っているのは、この親子だけではないでしょう。今日もウソを「切磋琢磨」するために刀ややすりを振るう音が、あちこちから響いてくるような気がします。

参考文献
太宰治の四字熟語辞典 三省堂

【注】「ロマネスク」・・・同人雑誌「青い花」の1934<昭和9>年11月に発表された短編。「晩年」新潮文庫、「太宰治全集1」ちくま文庫、に所収。


「ウソをつかないと誓ったことからしてウソ」という話をよく耳にしますが、もしかしたら元ネタは・・・。



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女性の007に賛成します。


複数のニュースによると、次回作の007は女性が演じるかも、とのことです。

まだ決定したわけじゃないらしいですけどね。

わたしは賛成ですよ。

だって007とは、イギリス諜報部 MI6 のコードナンバー【コードネーム】でしょ。

野球やサッカーで考えれば「背番号」みたいなもんですよ。

【初代】ショーン・コネリー【2代目】ジョージ・レーゼンビー【3代目】ロジャー・ムーア・・・と、顔も性格も変わっているのに、「同一人物です!」と言い張る方がよっぽど無理があります。


「初代007」、「2代目007」とは、歌舞伎や落語の、2代目・3代目のように「先代から受け継いだもの」【襲名】と考えるわけですね。


ジェームス・ボンドも、もちろん偽名です。リアルに考えたら、本名でスパイをやってるなんて、よほどの間抜けです。

そんなわけで「007」という背番号を女性が受け継いだのかなと、視点をちょっと変えれば納得できます。

現実の女スパイと言えば、伝説の美人スパイ「マタ・ハリ」が有名です。007、面白い映画になってほしいですね。

あたりまえを、うたがえ!


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コーカサスの白墨の輪

「子供の手を2人の母親に引っ張らせて、どっちが本当の母親か?」で知られる大岡裁きが「コーカサスの白墨の輪」に出てきます。

大岡裁き*1では、手を引っ張られて泣く子どもの姿に耐えられなくなった母親が手を放し、生みの親が勝利します。

しかしブレヒト劇では、育ての親が勝ちます。生みの親は負けてしまうのです。

それは、なぜなのか。

あらすじです。

コーカサスの白墨の輪」は、あつかい方を間違えると、同じものでもまったく違う結果になってしまいますよ、という【たとえ話】として語られる劇中劇*2です。


ある日、戦争が始まります。革命です。金持ちが貧しい者をイジメてばかりいたので、国民の怒りが爆発したのです。

金持ちの領主は殺され、領主夫人は、どのドレスを持って逃げるか悩んだあげく、自分の子ども【赤ん坊】を置き去りにして逃げてしまいます。

赤ん坊は見つかったら殺されます。それまでひどいことばかりしてきた金持ちの領主の子どもだからです。赤ん坊に罪はないのに…。

その赤ん坊を助けたのが、領主夫人の家で女中をしていた、この劇の主人公グルシェです。

しかしグルシェは、最初のうちは赤ん坊を助けようと思う気持ちはあまりありません。

なぜなら赤ん坊を助けたら、自分も殺されてしまうからです。

身近なものでたとえると、クラスでいじめられている子を助けると、自分もいじめられてしまうかも・・・というのに似ています。

しかも戦争の真っ最中です。赤ん坊を助けたら、ひどい目に遭うどころか、自分も「裏切り者」として殺されてしまう危険があるんです。

グルシェはそのことを知っています。だから迷いました。そして自分の命も危険になることを知っていて助けるんです。

グルシェは逃げます。それを兵隊が追ってきます。赤ん坊の首に賞金がかかったんです。

グルシェは兵隊に乱暴されそうになるなど、あらゆる困難に見舞われながら必死に赤ん坊を守ります。

やがて戦争が終わります。

平和になると、領主夫人が赤ん坊をさがし出して連れ戻してしまいました。

領主夫人の目当ては、おカネです。殺された領主の遺産を相続するには、領主の子どもが必要なんです。

グルシェは、「戦乱のさなか、赤ん坊を誘拐した悪い女」にされてしまいます。

そして裁判になります。

グルシェは「あの子は自分の子です」と言い張りますが、それがウソであることは裁判長に見抜かれてしまいます。

裁判長は言います。

「領主夫人の子になったほうが、子どもは金持ちになれるぞ。領主夫人の子になれば、あの子は一生、金には困らない。子供の本当の幸せを考えてみろ。あの子を金持ちにしてやりたくはないか」

裁判所の中は、領主夫人が金で雇った弁護士やらなんやらが大勢いて、グルシェの味方はほとんどいません。

そんな孤立無援の状態で、グルシェは何を思ったのか。

「もしもこの子を領主夫人の手にわたしたら・・・この子は弱い者たちを平気で踏みつけるような人間になってしまうでしょう。

わたしは、この子をそんな人間にするために命をかけて守ったのではありません」


そこで大岡裁き

グルシェが勝って生みの親が負けます。大岡裁判とは正反対の結果ですが、当たり前ですね。

しかもそれだけで終わらないのがブレヒト劇の真骨頂。

なんで大岡越前が名奉行なのかというと、「いい判決」をしたからなんですが・・・

奉行がいい判決をするのが当たり前だったら、大岡越前は「ふつうの奉行」ですよね。

ウラを返せば、大岡越前が名奉行なのは「いい判決」をする奉行があまりいないから?とも考えられます。

ではなぜひどい裁判官が多い中で、「コーカサスの白墨の輪」の裁判官は「いい判決」を下せたのか。

ブレヒトはその理由もちゃんと説明しているんです。

ブレヒトすごすぎ!

そんなわけで、今日は「コーカサスの白墨の輪」と「走れメロス」の朗読レッスンを行いました。

参考文献

ブレヒト戯曲選集 白水社

ブレヒト戯曲全集 未来社

 

【こぼれ話】

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作者のブレヒトが、赤ん坊を助ける物語にしたのは【人間の善悪は遺伝よりも環境が左右する】「暴君の息子でも愛情をもって育てれば、立派な人間に成長しますよ」という考えに基づいています。

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しかし世の中には「犯罪者の子は犯罪者。悪人の子は悪人に生まれついている。人間の善悪は遺伝する」という考えもあります。

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「そんなことはない!その考えは間違っている。たとえ悪人の子でも愛情をもって接すればいい人間になる」とブレヒトは言いたかったんですね。



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*1:

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大岡裁きは、「ソロモンの審判」と呼ばれる【旧約聖書 列王紀上 第3章16-28】が元ネタではないか、といわれています。

*2:劇中劇(げきちゅうげき)は、劇の中に挿入された劇。劇の中でさらに別の劇が展開する「入れ子構造」によって、 ある種の演出効果を生むためによく使われる技法。

超常現象

田舎の父親から、「お前に頼まれたお金だが、いつ振り込めばいいんだ?」と息子に電話があったそうよ。

でも息子は父親にお金を無心していなかったんだって。

ドッペルゲンガー

ドッペルゲンガーとは、自分とそっくりの姿をした人物が同時に別の場所に姿を現す超常現象です。


<SF>のひとつで「現実にはあり得ない」と長らく考えられていましたが、現在の日本では毎日のように起きている現象なんですって。

【超常現象】【日常現象】

気をつけようね。

参考
GROOVE LINE

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