ワークショップ 声優演技研究所 diary

「なんで演技のレッスンをしてるんですか?」 見学者からの質問です。 かわいい声を練習するのが声優のワークショップと思っていたのかな。実技も知識もどっちも大切!いろんなことを知って演技に役立てましょう。話のネタ・雑学にも。💛

生徒たちを、あたたかく見守る

「昔話からのメッセージ ろばの子」小澤 俊夫 著 より

昨日のブログの続きだよ。

「白雪姫」…三回も失敗したあげくに

子どもの成長には「とき」があることをみてきました。次にグリム童話の「白雪姫」をみてみましょう。

この「白雪姫」は、みなさんの知っている「白雪姫」とはすこし違うかもしれません。グリムによる、もともとの「白雪姫」は、女王に三回殺されます。

まず読み取れるのは、若者は何度も失敗してもいいのだ、ということです。白雪姫はたしかに、こびとの注意を忘れて、女王を家の中に入れ、ひも、櫛(くし)、りんご【注】を買ってしまいました。
【注】グリム童話の白雪姫は女王に、一回目は「ひも」。二回目に「くし」。三回目は「りんご」で殺されます。

実生活においても、人からいわれた注意や忠告を、大事なときに忘れてしまうことは、いくらでもあるでしょう。何回いわれても、またやってしまうことなんていくらでもあるのではないですか。白雪姫はまさにそうなのです。

それでも彼女としては、それぞれの場面で、一度はこびとたちからの注意を思い出して、「わたしは、だれもうちの中へ入れてはいけないことになってるの」といっています。それでも、美しい櫛や、おいしそうなりんごの誘惑には勝てなかった。いわば与えられた状況に精一杯反応しているのです。

精一杯反応したのだが、それが、失敗だった。これも実人生に、いくらでもあることです。こう考えてくると、どうも「白雪姫」は、精一杯やって失敗したら、それはそれでいいよ、といっているようなのです。

若者に失敗はつきものです。

今から40年ほど前、ちょうど私がドイツの大学【注】で昔話の比較研究というテーマで講義をもっていた頃、ドイツの若い児童文学関係者のあいだで、「白雪姫というメルヒェンは、白雪姫のようなばかな子になってはいけないよ」という教訓物語である、という意見が広がりました。
過ちを三回も繰り返している。経験値がないではないか。こういう愚かな子どもではいけない、というのです。
【注】この本の著者、小澤 俊夫さんはドイツのマールブルグ大学で客員教授をされておりました。

一見、もっともな意見のようですが、これが誤りであることはすぐわかります。

この意見のとおり、もし白雪姫が三回目に、これまでの経験値を活かして、りんごを食べなかったとしたら、白雪姫のその後の運命はどうなったでしょうか。

「白雪姫は王子と出会うことはなく、この山奥で、一生、こびとたちの食事を作ったり、洗濯をして暮らしました」となるでしょう。これは昔話の主人公の幸せな結末ではありません。現在の日本の脱都会派の女性にとっては、歓迎すべき結末かもしれませんが、昔話の主人公の幸せな結末ではないのです。

白雪姫は、経験値なしに、愚かにも三回殺されたからこそ、最後に結婚という幸せを獲得できたのではないでしょうか。


幸せの定義は人それぞれ、いろいろあります。小澤さんは、「結婚が幸せ」といっているのではなく、あくまでも昔話のハッピーエンドについて語っているんですね。


白雪姫は、まったく隙(すき)のない完璧な女性だったから幸せをつかんだんじゃない、という見方もできますね。
そのいっぽうで、「もしきみが、料理をしたり、ベッドをととのえたり、洗濯や、縫い物や、うちの中の用事をひきうけてくれるなら…」という、こびとたちとの約束はちゃんと守ってるわ。
白雪姫は、まじめで、素直で、みんなに愛されたから幸せになれたんでしょうね。

<参考文献>

「昔話からのメッセージ ろばの子」小澤 俊夫 著 小澤昔ばなし研究所 発行


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