ストップ温暖化!太陽黒点と気候危機
国連の「気候行動サミット」で、スウェーデンの16歳の活動家、グレタ・トゥンベリさんが温暖化対策の即時実行を求めて演説したことがニュースになりました。そこで…
目次
地球をてらす太陽
地球の気温を決めているのは、いったい何なのでしょう。一番大事なのは、太陽の光です。
夏になると、太陽が空のより高いところにのぼるようになって、昼間の時間も長くなります。ですからとても暑くなります。逆に、冬は、太陽があまり空高くはのぼらなくなって、とても寒くなります。
太陽の光がとても大事だということがわかりますね。
みなさんは太陽という星についてどのようなイメージをもっているでしょうか。もしかすると、空のかなたでただただ静かに光っているだけの星だと感じているかもしれませんね。
でも実際にはちがったのです。ときどきかんしゃくをおこしたり、ときには長いこと元気をなくしてしまったりと、とても気まぐれな星なのです。
太陽のご機嫌は、太陽の顔にあらわれるシミ「黒点」*1の数をかぞえると、知ることができます。
この「シミ」の数や大きさが、太陽のご機嫌を知る手がかりになります。
頁10-18
太陽と地球の気候の関係性
太陽の元気の度合いは、ゆっくり変化しています。ひとつひとつの黒点は、だいたい数週間もすれば消えてしまって、次から次へと新しいものが出ては消えてをくり返していますが、全部で何個くらい黒点が見えているか、という数が毎年少しずつ変わるのです。*2
だいたい11年くらいのリズムで変わるということが知られています。
たとえば、黒点がとてもたくさん出ている時期が2年くらい続くと、その後は、黒点はだんだん減(へ)っていきます。3年から5年くらいかけてゆっくり減っていって、ついにはほとんど出ない年がきます。
でもそれも長続きはしません。1年か2年くらいするとまた黒点は増(ふ)えはじめます。そして、3年くらいかけて、また元のとても元気な状態にもどるのです。
ところが、黒点が何十年ものあいだ消えっぱなしになってしまった、奇妙な時代があったことが発見されました。
頁45-46
マウンダー極小期
黒点はふだんから、11年のリズムで増えたり減ったりしていますから、11年おきに、1年とか2年くらいは、黒点がとても少なくなることがあります。
けれども、17世紀の後半では、50年以上にもわたって黒点が消えてしまっていたのです。この出来事は、のちにマウンダー極小期と名付けられました。太陽の黒点が消えてしまうと、いったいどんなことがおこってしまうのでしょうか。
それは地球が寒くなってしまうという問題です。
太陽の黒点が減ると地球が寒くなる
黒点がなくなった時代、世界のあちらこちらで異常な出来事がおこりました。
たとえば、イギリスのロンドンにテムズ川という大きな川があります。いまは、とても寒くなった年でも、川の一部に少し氷がはるくらいですが、黒点が消えてしまったこの時代には、川が完全に凍(こお)ってしまうということが何度もおこりました。
それから、ヨーロッパのあちらこちらにある氷河もどんどん広がりました。氷河というのは文字通り、氷の川です。
黒点が長いあいだ減ってしまった時代、氷河はどんどん増えていきました。そうしたことから、その時代は小氷期と呼ばれるようになりました。
マウンダー極小期では、1645年くらいにとつぜん黒点が消えてしまって、1700年ごろまで黒点はあらわれませんでした。その後ようやく黒点がちらほらあらわれはじめて、1715年ごろマウンダー極小期は終わりました。
頁48-91
さて、現在では
この本を書いている2019年のはじめごろの太陽の様子はというと、2013年から少しずつ減ってきていた黒点の数がついにすっかり消えてしまって、太陽の顔がのっぺりとした日が続いています。1年のうちの半分以上は、黒点が見えない日が続いています。
そろそろ、太陽の活動が下がりきったころなのかなというところです。そろそろまた黒点がではじめるかもしれません。
頁96
あれ…ちょっと待って。
去年、今年とすっっっごく暑かったよね。
てことは・・・
この本を読んでいろんなことがわかりました。
「そうか、だから今年は冷夏になると、最初のころは言われてたのかな」とか・・・
地球は氷河期をむかえるの?
「地球は氷河期になる」というウワサもありましたが、その謎も解けました。
太陽の異変
実は2008年になって、大事件がおきました。
ここ100年ほどのあいだ、太陽はとても元気でした。11年ごとに増える黒点の数も、とても多い時代が続いていました。
ところが、その元気な太陽に少し異常が見られはじめたのです。
太陽は、1996年に黒点が少ない時期をむかえて、そして、その4年後の2000年ごろにとても元気な状態になりました。そして、いつものようにまたゆっくりと静かになっていきました。
いつもの太陽だったら、1996年から数えて11年がすぎたころの2007年にまた黒点がゼロになって、そしてそこからは黒点が増えはじめるはずです。ところが、2007年が終わっても、そして2008年になっても、黒点は増えてきませんでした。
増えないどころか、ほんの小さなシミひとつない、のっぺりとした顔をし続けたのです。2009年のなかほどになって、ようやく黒点が増えはじめました。
この太陽の異変は、誰も予測できていませんでした。
その数年前までは、太陽は本当に元気いっぱいで、太陽フレアもとても大きなものがたくさんおこっていました。ですから、まさかこんなに突然、太陽の元気がなくなってしまうとは、思っていなかったのです。
太陽の明るさも、想像以上に減ってしまいました。太陽からふく風も、これまで見たこともないほど弱くなってしまったのです。少なくとも100年ぶり、もしかしたら200年ぶりかもしれないというほどの弱さでした。
2009年の中ごろになってようやく、太陽は元気をとりもどしたように見えました。そして、また黒点を増やしはじめました。ところがやはり、体調は、いつもとはちがったままだったようです。
2013年に黒点の数が増えきったときも、いつもの半分ほども調子がでないままでした。そして、ふたたび黒点は減りはじめました。
太陽がもっているリズムから考えると、2019年の終わりごろには黒点がまた増えはじめて、その何年かあとに黒点が一番増えるはずです。けれども、2013年のときと同じように、いつもの半分くらいしか黒点がでないかもしれない、と考える研究者が増えてきています。
でももし、黒点がいつもの半分に減るくらいですむのであれば、大したことはありません。黒点が50年ものあいだずっとゼロに近い状態が続いていた、17世紀のマウンダー極小期にくらべると、ちょっと風邪でもひいたのかな、というようなものです。マウンダー極小期は、ひどく寝こんでしまっていたような感じでしたから。
さらに先の太陽がどうなってしまうのかは、まだ誰にもわかりません。太陽は元気になっていくのかもしれませんし、もしかしたら、今見えている異変は、もっと体調が悪くなる前兆にすぎないのかもしれません。
いずれにしても、今は200年に一度しかおこらない太陽のめずらしい姿を見ることができる貴重な時期なのです。
頁93-97
太陽の元気がないのに、今年のヨーロッパは記録破りの猛暑となりました。
23日に、ニューヨークで開かれた「国連気候行動サミット」は、過去2回の「気候変動サミット」とは違い、「行動」の二文字が強調されました。
英紙ガーディアンは、激しさを増す異常気象への危機感を反映し、「地球温暖化」を「地球過熱化」に
「気候変動」は「気候危機」と言い換えることにしたそうです。
温暖化対策、待ったなし!だと思います。
参考文献
太陽ってどんな星? 新日本出版社
Voice actor laboratory 声優演技研究所
*1:黒点の正体は、目には見えない磁場がそこにあることの目じるしです。
太陽の表面は6千度もの温度があります。でもとても強い磁場があると、熱がさまたげられてしまって、そこに入れなくなってしまいます。そうすると、温度が下がって少し暗く見えるのです。温度が下がるといっても、黒点の温度は4千度もあるんですけどね。
黒点がたくさんでてくると、太陽の危険信号です。
とくに大きな黒点が出来て、地場の形が乱れると、いよいよ太陽はかんしゃくをおこす一歩手前です。
大きな黒点があらわれると、大変な災害がおこることがあるのです。
太陽の表面に黒点があらわれてからしばらくすると、黒点のまわりでからみあっていた磁場が、たくさんのプラズマをふきとばすことがあるのです。
プラズマが飛びだしてくるとき、太陽からは強い光もはなたれます。「太陽フレア」と呼ばれています。
太陽フレアは、小さなものもふくめれば、しょっちゅうおこっています。でも、小さなものは地球にはそれほど影響しません。ところが、大きな黒点があらわれてとても大きなフレアがおこると、私たちの生活にも影響してしまうことがあるのです。
太陽フレアがおこって、プラズマのかたまりが地球にやってくると、地球がもっている磁場にぶつかります。
地球にぶつかってきたプラズマのかたまりは、地球がもっている磁場をこれでもかとゆらします。宇宙で嵐がおこるのです。この嵐が、地球上でいろいろな災害を引きおこしていきます。
一番心配されているのが停電です。
プラズマというのは、電気をおびている気体のことです。
太陽フレアが原因で流れる電気は一瞬だけ。一瞬にしてたくさんの電気がながれてしまうと、電線が焼き切れてしまうのです。
電線は、普段どれくらいの電気が発電所から流れてくるか、という量を考えて設計してあるので、ものすごくたくさんの電気が一気に流れてしまうと、電線が切れてしまい、停電になってしまいます。
みなさんは、ふだん電気を使って生活していることと思います。テレビ、エアコン、冷蔵庫もそうですね。電車も、電気を使って走っています。
カナダで大停電がおこったときは、9時間も停電が続いて、600万人もの人が影響をうけました。
太陽フレアがおこると、人工衛星がこわれてしまうこともあります。
人工衛星がこわれると、天気予報ができなくなったり、TVの衛星放送が見られなくなったり、スマホの地図アプリや、カーナビもおかしなことになって、自分がいる場所がまったくちがうところに表示されてしまうのです。
そこで、太陽フレアがおこってしまったときに、どのくらいの影響がでそうか、予報している人たちがいます。宇宙天気予報と呼ばれています。
日本では、東京にある情報通信機構という研究所や、名古屋大学の宇宙地球環境研究所というところなどで研究が進められています。
頁18-37
*2:太陽のN極とS極。
地球も太陽も、棒磁石と同じようにN極とS極を持っています。
地球の磁場は、何千年という時間をかけてゆっくりと変化しますが、太陽はちょっとちがいます。
水素などの気体でできている天体なので、変化がとても速いのです。ですから、しょっちゅう磁場の向きが変わっています。
ころころ変化するのです。
黒点がとても増えているときに、N極とS極が入れ替わることが知られています。
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