どっちが悪魔?
竹山道雄「剣と十字架」文藝春秋新社より
私はスイスのツーグ湖のほとりのじつに平和な村に、しばらく暮らしたことがある。
そこはカトリック地域だったが、村の中にプロテスタント教会があった。
そのそばを、村の子供と歩いていたら、その子が指さしながら、「あれは悪魔の家だよ」といった。
これをきいたとき、私はじつに深刻なものだと思った。
頁248
カトリック (旧教) もプロテスタント (新教) も、どっちもキリスト教だよね。
マルティン・ルターと宗教改革
「免罪符」ビジネスです。
人は年をとると死後のことが気になります。
「死んだ後に地獄に落ちたらどうしよう・・・」
そこでカトリック教会は考えました。
「免罪符を買いましょう。このありがたい免罪符さえあれば――ひらたく言えば――お金さえ払えば地獄に行かなくてすみますよ」
それってひどいよね!神様に仕える者がそんなことしちゃいけないよ‼
そう訴えたのが、マルティン・ルター【1483年11月10日~1546年2月18日】です。
しかしカトリック教会は、
「せっかくおカネがもうかってるのに・・・」
ルターは異端だ!
ルターは破門(1521年)だ!
そして「我々に歯向かうマルティン・ルター【プロテスタント】は悪魔だ」と、なっていったんですね。
カトリック対プロテスタントの戦争へと発展
「騎士戦争」1522-23
まず、ルターの教えを掲げた反教皇の騎士たちが反乱を起こしました。
「ドイツ農民戦争」1524-25
さらに、農民たちが立ち上がりました。
マルティン・ルターは、1546年に故郷の町で穏やかに亡くなっています。
しかしカトリックとプロテスタントの対立は、ルターの死後も続き、ドイツを舞台にヨーロッパ中を巻き込んだ「30年戦争」1618-1648 に発展していったのです。
カトリックとプロテスタントの対立は、ブレヒトの作品にも描かれています。
【小説】「アウクスブルクの白墨の輪」
【戯曲】「肝っ玉おっ母とその子どもたち」
【戯曲】「ガリレイの生涯」
ガリレオは敬虔(けいけん)なローマ・カトリックの教徒でした。カトリックの信者なのに、「聖書に書かれている内容はウソだ」と【結果的に】認めてしまう地動説を唱えたため、教会からにらまれたのです。*1
人びとが聖書を信じなくなったら、信者がへって、カトリックにおカネが集まらなくなりますからね。
「悪魔はもともと神様だった。(10月15日のブログ)」調べてみると、いろんなものが根っこでつながってるんだね。
そんなことを話しながら、今日はシェイクスピア風パロディ戯曲と朗読のレッスンを行いました。
それでは、また来週!
【補足】
それでは、マルティン・ルターはどういう人だったのかというと「厳(きび)しすぎる、厳格すぎる」という意見もありました。
なにごとも極端ではなく、ほどほどがいいのかもしれませんね。
Voice actor laboratory 声優演技研究所
「なぜこの国の秩序は空っぽで、必然性とは、けわしい葡萄(ぶどう)山や麦畑で働いて死ぬことでしかないのか?
慈愛深いイエスの代理人である教皇がスペインやドイツでやっている戦争の金を、農民たちが払わされているからですよ!
なにゆえに教皇は、地球を宇宙の中心に置くのか?教皇庁の玉座が地球の中心になれるようにです!そのことが大事なんですよ。」
「ガリレイの生涯」より
【スペインやドイツで遂行している戦争】
三十年戦争【1618-48】はこの時期まだ始まっていないが、歴代の教皇は、ドイツ皇帝の新教徒(プロテスタント)への弾圧やスペインのブルボン王家に対する戦いに巨大な軍費や軍兵を送って援助した。「ガリレイの生涯」岩波文庫 訳注より