言いたいことが言えない恋愛
恋人に嫌(きら)われたくないばかりに、自分を押し殺して言いたいこともいえずに交際している人は少なくありません。
収入や地位、外見だけで結婚して、すぐに会話のない冷めた生活になってしまう夫婦。
DVにおびえる女性などは、まさしく声を失っています。
この童話の解釈<須田輸一氏>がすごい――。
人魚姫
人間になる代償として声を失う
もし人魚姫が声を失わなかったら、王子に恋心を伝え、なおかつ命を助けたのは自分であることも説明できたはずです。
王子と結婚できたかもしれません。
人魚姫の悲恋の原因は、声を失ったことによるところが大きいのです。
しかし、人魚姫にかぎらず、私たちの恋愛においても、“代償として声を失う状況”があります。
玉の輿(たまのこし)だと皆がうらやむ結婚でも、姑や親戚に言いたいことが言えずに苦労をしている人はたくさんいます。
恋愛だけではありません。
ママ友づき合いや職場、クラスメートの人間関係などで自分を押し殺している人はふつうにいます。
子どもの家庭内暴力におびえて声を失っている親もいます。
男女の関係にかぎらず、声が出ているか否かは生活全般に言える判断基準です。
「もし今のあなたが、なにかの代償として声を失っているなら、その環境を見直してください」と、童話「人魚姫」は時代を越えて語りかけているのかもしれません。
参考文献
おとなになって読むアンデルセン メトロポリタンプレス
Voice actor laboratory 声優演技研究所