読解力と演技のうまいヘタは関連する
初心者のための「文学」
いちばん言いたいことを間接的に表現するのが「文学」です。
だからさまざまな読み解き方が存在します。
一般の方々なら、他人に迷惑をかけないかぎり、どう読み解いてもいいでしょう。
ただし声優となるとそうはいきません。
なぜなら「先生から褒められる読書感想文」のときに書きましたが、文章を読み解いて、自分とは異なる視点「原作者」「演出家」「時代の変化にともなう解釈の変遷」が分かるかどうかで【役の表現方法がまったく変わってしまう】からです。
つまり読解力があるかどうかは「発声や滑舌」と同じように、演技のうまいヘタにかかわってくるんですね。
だからこそ文学の「解説書」が必要になるのですが、「マジすげえ」とたまげた本がこちらです。
本を紹介することで私がお金を儲けようとは思っていません。なので
太宰治をはじめ、これまで自分が考えたこともない「読み解き方・考えかた」にあふれていました。
この本、初心者のための「文学」を読むメリットとしては【視点・考えかた】がふえることにあります。
考えかたがふえれば、演じられる役の人物もふえ、演技の表現も繊細(せんさい)で細やかになっていくからです。
ただ「初心者」というタイトルから子供向けをイメージしてしまいますが、まったくの大人向けの本です。おすすめします。
【今回紹介した本】
初心者のための「文学」 角川書店
初心者のための「文学」補足事項
映画脚本家 笠原和夫さんの本に、こう書かれていました。笠原和夫さんは、軍隊生活を実際に経験されています。
「軍隊で酷(ひど)い目に遭った人間と、軍隊に入る前に終戦を迎えた人間では、考え方は変わってくる」
つまり「戦争の現実を知っている人と、理想だけを教えこまれた人とでは考えかたがちがってくる」というのです。
それは「大本営発表」をイメージすれば理解できます。「戦争プロパガンダ10の法則」にも書いてありますように、戦争中は国内向けにマイナスの宣伝や教育をすることは、考えられませんからね。
わたしも、この【初心者のための「文学」】の著者も戦争には反対です。
ただし、プロパガンダだけを聞かされて終戦をむかえた人たちのなかには、「戦争は美しい」と思いこんでしまったままの人たちがいても不思議ではないんです。それを念頭に置いてご一読くださるといいと思いますよ。