量子力学は日常生活に必要か
普段の生活に必要なの、役に立つの
科学の大発見が報じられると、こんな言説もネットに飛び交います。
しかし量子力学がなければ、現代文明そのものが成り立ちません。
量子力学は最新テクノロジーの土台
量子力学がなくても、車は道路を走り、飛行機は空を飛び、電力は供給されるでしょう。
しかしそれは、現代の洗練されたテクノロジー文明ではなく、百年前のあらけずりの産業文明です。
自動車でいうと、高性能CPUを内蔵し、エンジンの点火からシートベルトまでデジタル制御され、カーナビがついた車から、百年前の1913年型フォード車に戻るということなんです。
1,913年型フォード車のプラモデル
クリーンなエネルギー源である太陽電池も、量子力学なしにはありえません。
情報技術や原子力、クローンやヒトゲノム計画で話題を呼んでいる生命科学、脳、神経科学、ナノテクノロジーなど、最新テクノロジーの土台には、量子力学という名の巨人が鎮座しています。
もし量子力学がなければ、現代の文明は一瞬たりとも存在しえないのです。
そもそも量子力学とは何なの?
それを知るためには、わたしたちの文明を支えている、もうひとつの科学を知っておく必要があります。
その科学とは、量子力学とつねに対比される「ニュートン力学」です。
ニュートン力学がなければ、いまだに江戸時代!
量子力学がなくても、車や航空機や電力や電気通信といった科学文明は成立します。今から百年くらい前の文明がそうです。
しかし、ニュートン力学がなければ、百年前の文明すら成立が不可能になるんです。
大量生産、大量消費という近代化をもたらした原動力は、量子力学以前のニュートン力学です。
産業革命がおこり、機械による大量生産と大量消費という、いわゆる近代化をもたらした原動力こそが、ニュートン力学だったのです。
ニュートン力学のない世界とは、西欧でいえば中世、日本では江戸時代ということになるんですね。
医療現場にも量子力学が!
X線撮影やCTスキャンも
現代の医療は、臨床現場で活躍するさまざまな医療機器の分野においても、量子力学から大きな恩恵を受けています。
X線撮影 (レントゲン写真) は、X線というものが量子力学の誕生とほぼ同時期に発見され、量子力学によって説明される放射線ですから、量子力学の産物といえるでしょう。
それだけではありません。医療現場では必需品となっているCTは、量子力学を基礎とするコンピュータ技術がその土台となっています。
なかでも、NMR-CTは、核磁気共鳴という難しい物理学の原理を用いているのですが、核磁気共鳴は、量子力学によって原子核の様子が明らかになって初めて説明される量子現象なんですね。
量子力学と相対性理論(まとめ)
現在、物理学の最前線で使われている基本思想は「場の理論」です。そして、場の理論の土台が「量子力学」と「アインシュタインの相対性理論」なんですね。*1
いろんなことを知るって快感ですね。それでは、また。
参考文献
そこで姉妹編です。
スマホやカーナビのGPS装置 (自分の現在位置がわかる「地図機能」のこと) は、相対性理論のおかげでした
原子の安定性とクォンタム・ジャンプ、この二つの奇妙な事実を説明することから、20世紀の物理学は出発しました。
そして、アインシュタインやド・ブロイの仮説を経て、ほぼ同時期に発表されたのが、シュレディンガーの「波動力学」と、ハイゼンベルクの「行列力学」です。
すぐにディラックとジョルダンによって、シュレディンガーの方程式とハイゼンベルクの方程式からは、どのような問題に対しても常に同じ答えが導かれることが証明され、両者の方程式は同等であることがわかりました。
もっとも、シュレディンガー方程式には波という具体的なイメージがありますが、それに比べてハイゼンベルク方程式の方はより抽象的で物理的イメージが付けにくいものです。
そのため量子論を学ぶときはまず、シュレディンガー方程式から始めるのが普通です。
しかし複雑な問題になると、ハイゼンベルク的な方法の方が役立つ場合も数多くあります。
参考文献
シュレディンガーの猫がいっぱい 河出書房新社