伝えることの大切さ【実話】
自分の言いたいことを、しっかり相手に伝えられないと大変なことになってしまう・・・。
そんなことを考えさせられた実話です。
「嘘みたいな本当の話」より
「頭のなかが真っ白になったんです」
そのおばさんの訴えだった。
夜間緊急外来は大量の患者でひしめきあっていた。
このくそ忙しいときにやっかいなおばさんが来たな、と思った。
それでも営業スマイルで丁寧に話を聞いた。
頭のなかが真っ白になったとおばさんは繰り返す。
てきぱきと診察をする。
異常なし。
そろそろいいだろうと「おうちで様子を見ましょうね」と席を立つそぶりをした。あなたも席を立つ時間ですよ、と僕は目で促した。
おばさんは納得いかない表情で席を立つ。
歩き出す。こつん。おばさんの左足が机に当たる。おばさんは気にも留めずに歩き続けようとする。
左足が当たる?
それは左半側無視の兆候。体の左半分の刺激が認識できなくなってしまう、大脳右半球の障害を示唆する。
急いで頭部CTをオーダーする。
右脳に脳出血。
彼女の頭には確かに真っ白な出血像が映っていた。
「噓みたいな本当の話」 イースト・プレス社より
「残像に口紅を」筒井康隆・著 は、言葉が少しずつ消えていく世界を描いたSF小説です。
その作品では、言葉をあまり知らない人は、たくさん言葉を知っている人に比べて、相手に自分の気持ちを伝えることが困難になる、という状況が描かれています。
「噓みたいな本当の話」と「残像に口紅を」
相手にきちんと気持ちを伝えるには【語彙の量】知っている言葉の数を増やすことが大切なのかな・・・一歩間違うと怖いことになっちゃうかも・・・なんて思いました。
参考文献
噓みたいな本当の話 イースト・プレス社